借金返済計画と多重債務者の行動心理


多重債務者が一般的な借金返済計画を立てたところで頓挫するだけだと思っています。

私がそうでした。

例えば、まず始めに「いつまで返済したいか完済日を決める」として、その為に逆算していく計算式が一般的な借金返済計画だとしますと、それができるぐらいなら「いま現在、借金で困っていない」となりますし、そのような計画書は借金が増える要素がないことを前提に立てられていますので、借入をしなくてはならない状況の多重債務状態では、せっかくの計画書も2度3度と書き換えを余儀されなくされ、次第に「もうそんな計画を立てても無駄だ」と、借金の返済のことを考えること自体に嫌になってくると思います。

一般的な借金返済計画が多重債務者に効果がない理由。

私は借金を相談した時の弁護士に、何かの話しの流れで「債務返済計画書」を作成してみてはいかがですか?と言われ、計画書のフォームもいただいたことがあるのですが、項目ごとに書き込むことが面倒くさくなってしまった記憶があります。

確か、大まかな記入事項はこんなような一般的なことだったと思います。

一般的な借金返済計画

  • 最初に完済日を決める。
  • その完済日から逆算して返済回数と返済額を決める
  • その決めた返済額のために努力する
  • 努力を実現するための方法を考える

私は、まず「最初に完済日を決める」ということが、極端ですけど明日とは言わないまでも、来月の返済さえ見通せない借金生活の中で、どうして遥か先の完済日を決められるのか?とイメージさえできず、「完済日はなるべく早いほうがいいです」と答えたことがあります。

すると弁護士は「なるべくとは、いつごろですか?具体的な目標、例えば何歳までにとか、何年後に旅行に行くまでとかありますか?」と、聞き返してきました。

今に思えば、目標を具現化させて、それに対する行動や理由を書き出すことで、多重債務状況に陥っている生活改善やお金に対する思考そのものを改めるための、ひとつひとつが「正しい行動」を「合理的に」実践していく為のものだったと思います。

  • 最初に完済日を決める=目標
  • その完済日から逆算して返済回数と返済額を決める=手段方法
  • その決めた返済額のために努力する=行動
  • 努力を実現するための方法を考える=早期返済

それは借金返済計画書ではなく、収支が赤字にならない為の行動指針だったのです。

一般的な借金返済計画書は支出を少なくし収入を増やす、その差益で繰り上げ返済をしていく。

支出を少なくするためには、家計を見直し無駄を省く。

毎月の返済額が5万円であれば、5万5千円にするための節約をする。

更に、今以上に収入を増やすために合理的な工夫を計るという、計画書の形をした行動指針なのです。

確かに、これが住宅ローンなどの生活に関わる長期の借金であって、ローンの返済に困って今後どのように返済していくか?となれば、この「見直し論」は正しいと思います。

さっそく「明日から見直してみよう」と行動する気にもなると思うのですが、その時の私は「夏休みのスケジュール」を立てなさいと叱られている子供の気分にさせらました。

それぐらい借金返済に差し迫られていて「そんな悠長なことでは、私の多重債務状況は変らない」

他に手段はないものか?と余計に焦らされた苦い記憶があります。

多重債務者の心理。

一般的な借金返済計画書が、完済日から全てを返済の為に逆算する合理的な正しい行動の方法だと思いますので、私は借金返済計画というものを作ってそのの通りに実行できる人は、そもそも多重債務の借金苦に陥らないと思っています。

そして合理的で正しい行動をする上でも、特に下記のような行動経済(心理)学が強く働くと思います。

この心理こそが、一般的な借金返済計画書の妨げる要因になっていると思います。

投資の世界に、失敗につながる思考の習慣という行動経済学(心理)というものがあります。

行動経済学は、人がお金を扱う時の心理として、その都度それが正しいと思って判断しているはずでも、間違ってはいないが結果的に正しくない判断になるということは多いというのものです。

人は最も効率的で合理的な判断をする存在という前提で考えられてきた行動心理学ですが、近年では実際の人間は環境の影響や感情によって不合理な判断をするという考え方をします。

そういう人の感情や心理的側面を考慮して経済学を考えるべきいうのが、「行動経済学」です。

端的にいえば、損失は利益より2倍大きく感じるという人の心理です。

借金返済の行動経済
出典引用:行動経済学のイントロダクション

その損失は利益より2倍大きく感じるという心理は5つあります。

それぞれプロスペクト理論、ハーディング効果、コンコルドの誤謬、現状維持バイアス、ギャンブラーの誤謬といいます。

借入を利益、返済を損失と当てはめてみますと意外なほどマッチしましたので挙げてみます。

(1)プロスペクト理論

プロスペクト理論とは、利益が得られる時と損失が発生する時では価値の感じ方が違うということを説明した理論です。

「利益=借入」の時と「損失=返済」の時ではお金に対する価値の感じ方が、人それぞれ異なるというものです。

投資の世界に例えますと、利益が出ている時は損失を恐れ、損失が出ている時は危険を承知で追加投資をしてしまうという過ちです。

つまり多重債務者の心理に当てはめますと、借入を繰り返しながらも「このままじゃいけない」と分かっていても借金を繰り返してしまうということです。

(2)ハーディング効果

何かを判断するとき、人は多くの人が選んだ方を選択するという傾向があります。

それを「ハーディング効果」と言います。

最近の銀行カードローンのCMに出演する好感度のよいタレントのイメージに乗じて、みんながカードローンの1つぐらい組んでいるのではないかと考えがちで、他人もそうだから私も大丈夫、安全だという考え方です。

(3)コンコルドの誤謬
コンコルドの誤謬とは、人はある程度コストを払うと失敗したと思っても引き返すことができない(冷静な判断ができない)という傾向のことです。

よく借金の債務整理を躊躇する理由のひとつに、借金の半分をようやく返済したので、残り半分を頑張るという方がいます。

これがまさにコンコルド誤謬で、これまでの返済で生活その他が疲弊したにも関わらず、それを捨てきれずに残り半分に執着してしまうことが例えられます。

(4)現状維持バイアス
現状維持バイアスとは、自分の知らないものを避ける傾向と大きな変化を望まないで現状維持をしたくなる傾向のことをいいます。

多重債務者の心理としては、今がどんなに最悪な状況の借金苦でも、何か現状を変えると今よりも事態は悪化してしまうという不安を抱きます。

その不安より得られる可能性のほうが勝っていることが分かっていても現状維持のライフスタイルを変えたがらない傾向があります。

(5)ギャンブラーの誤謬
ギャンブラーの誤謬は、合理的な根拠がないにも関わらず確率論に基づいた予測を心理的に拒絶してしまう心理現象です。

例えば、コインの表裏の出る確率は50%「裏、裏、裏、裏」と来ると、次は表が来そうだと考えてしまうのが人の心理ですが、コインの裏が4回続いた5回目は、そろそろ表と予測してしまうことをいいます。

借金返済に例えるならば、何もかもうまくいかないことには原因があるにも関わらず、「悪いことばかりは続かない、そろそろ好転してもいいはず」と根拠なく楽観してしまう傾向があると思います。

つまり、多重債務者の心理は「借金だって、必ず何かいい返済方法がある」と、損失(返済)は利益(借入)より2倍の苦労が伴うものと、身を持って分かっているだけに、一般的な借金返済計画書を立てることに、それが正しくて合理的なことだとしても、そこに借金返済していく根本的な意義を見出さないと思うのです。

多重債務者の借金返済計画。

一般的な借金返済計画書が不十分に感じるのは、コツコツと正しく合理的に生活していくことを、借金返済を損失と考えてしまうため、当たり前のことでは不十分に感じてしまうのだと思います。

少なくても私は、借金返済だけのために生活の全部を犠牲にすることは耐えれませんし、それでも耐えなくては借金は減っていかない状況でもありましたので、そんな多重債務時代に立てた借金返済計画は、一般的な計画書がまず最初に「完済日を決める」だった部分を、「完済日を決めない」としました。

あくまで完済日は通過点でとしました。

借金返済が終わっても人生は続きますし、多重債務に陥った借金生活も人生の一部です。

そして完済した後の生活でもお金は必要となります。

ですので、借金返済中から完済しても借金をしなくても済む、あるいは再度借金をしなくてはならない状況になっても困ることのない返済スタイルを築きながら、通過点である完済日に向けて過ごしていけるような、借金を完済するためだけの計画ではなく、1歩先を見通しながらの完済後のライフプランも念頭に置いた人生設計のような計画書ですと、ヤリがいも感じれると思います。


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